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【大阪難波の社労士】ドライバーの労働時間の上限規制とは?運送・物流への影響も解説
大阪難波を中心に企業の労務対応をサポートしている、社会保険労務士法人渡辺事務所です。
運送・物流業で欠かせない存在が、トラック運転手といったドライバーです。長距離輸送によって長時間労働が多いと知られていますが、2024年4月より労働時間の上限規制がスタートします。
本記事では新しく始まるドライバーの労働時間の上限規制について、運送・物流業への影響と一緒に解説します。
2024年4月よりスタート!ドライバー職における労働時間の上限規制
運送・物流業では、これまでドライバーにおける長時間労働が常態化しがちでした。
2021年に実施した調査結果をまとめた厚生労働省の「トラック輸送状況の実態調査結果(全体版)」によると、トラックドライバーの1日の平均拘束時間は12時間26分、平均休憩時間は1時間58分です。労働時間は「拘束時間-休憩時間」で計算できるため、1日の平均労働時間は10時間28分になります。
長時間労働の実態を受けて2019年4月に労働基準法が改正され、2024年4月よりドライバーにおける労働時間の上限規制がスタートします。
以下で主な内容を見ていきましょう。
参照:厚生労働省「トラック輸送状況の実態調査結果(全体版)」
1年間の時間外労働
ドライバーの時間外労働は特別条項付き36協定を締結する場合、1年間で960時間の上限が設けられます。月平均で80時間の計算ですが、1カ月の上限規定はありません。
時間外労働の上限規制は労働基準法で定められているため、違反すると罰則の対象となります。
1日の最大拘束時間
1日の最大拘束時間は、原則として13時間までです。上限は15時間ですが、14時間を超えた拘束は週2回までが目安となります。
また宿泊を伴う長距離貨物運送では、16時間まで延長が可能です(週2回まで)。
1カ月・1年の最大拘束時間
1カ月の最大拘束時間は284時間まで、1年で3,300時間までとなります。
労使協定を締結している場合は、1カ月310時間まで(年6回まで)、1年で3,400時間までです。ただし「284時間超えは連続3カ月まで」「1カ月の時間外・休日労働の時間数は、100時間未満」の要件を満たす必要があります。
1日の休息時間
1日の休息時間は連続して11時間以上の休息を基本とし、9時間を下回らないようにしなければいけません。
ただし、宿泊を伴う長距離貨物運送では、連続して8時間以上が必要です(週2回まで)。
連続運転時間
連続運転時間は、1回あたり4時間以内です。途中で運転を中断する際は、1回あたり約10分以上、合計30分以上の休憩を設けます。
ただし、事情によってサービスエリアやパーキングエリアなどに駐停車できず、運転時間が4時間を超える場合は4時間30分まで延長可能です。
ドライバーの上限規制に伴う運送・物流における影響
ドライバーにおける労働時間の上限規制は多様な影響を及ぼす可能性があり、よく「運送・物流の2024年問題」などと呼ばれています。
現時点で考えられる主な影響内容は、次の3つです。
売上や利益の減少
運送・物流業界は労働集約型産業と呼ばれ、人間の労働がダイレクトに会社の売上や利益に直結しています。そのため、上限規制によってドライバーの労働時間が短縮されると、比例的に会社の売上の減少も想定されるでしょう。
また人件費を削減できても、オフィスや事務所などの賃料といった固定費は残り、利益が減少する可能性も考えられます。
収入の減少
ドライバーの中には時間外労働をしている人が多く、毎月まとまった額の残業手当をもらっていることも少なくありません。
時間外労働時間に上限規制が設けられると、当然のことながら、これまでもらっていた残業手当の額が少なくなり、収入自体が減少するケースもあるでしょう。
運賃の上昇
上限規制によって会社の売上や利益が減少すると、減少した分を補填するために、運賃上昇の活発化が予想されます。
運賃が上昇すると会社の売上や利益、ドライバーの収入減少対策につながりますが、同時に荷物の依頼主が負担するコストが大きくなるかもしれません。
ドライバーが働きやすい職場環境づくりのポイント
長時間労働が多い運送・物流業では、上限規制以外にもドライバーが働きやすい職場環境をつくることが重要です。働きやすい職場ではドライバーが定着し、安定的な会社経営につながります。
以下で、ドライバーが働きやすい職場環境づくりのポイントを紹介します。
デジタルタコグラフを導入する
デジタルタコグラフはデジタコとも呼ばれ、自動車運転時のスピード・走行時間・走行距離をメモリーカードなどへ記録するものです。運転日報や稼働実績などの帳票も作成できるため、ドライバーの効率的な労務管理に役立ちます。
また交通事故の防止やドライバーの運転特性などを把握するために、ドライブレコーダーも積極的に導入するのがおすすめです。
参照:公益社団法人全日本トラック協会「トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン(解説書)【概要版】」
同一労働同一賃金のルールを遵守する
運送・物流業界では正社員ドライバーのほか、契約社員や定年後の継続雇用となったドライバーも多く働いています。実際の業務内容がまったく同じでも、雇用形態によって手当の額が異なるケースは珍しくありません。
しかし、雇用形態による待遇格差は、従業員の不満につながります。異なる雇用形態間における不合理な待遇格差を解消するために、同一労働同一賃金のルール遵守が大切です。
参照:厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」
柔軟な働き方の導入
上限規制による会社の売上や利益の減少を防ぐためには、多くのドライバーの確保が求められます。従業員のライフスタイルに合わせて柔軟な働き方を導入すると、ドライバーの確保につながります。
時短勤務や副業・兼業など、まずはそれぞれの職場で取り入れやすいものから検討してみましょう。
まとめ
これまで運送・物流業界ではドライバーの長時間労働が課題とされていましたが、2024年4月からは労働時間の上限規制がスタートします。労働基準法による義務だけでなく、適切な職場環境づくりや従業員の健康管理に役立つため、規制内容を遵守しましょう。
社会保険労務士法人渡辺事務所は、大阪市中央区難波を拠点に全国対応しております。労働時間の上限規制を含む労務監査や労務改善に応じ、トラブルのない職場づくりをサポートします。
労務監査や労働改善などでお悩みの担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
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