新着情報

キャリアアップ助成金正社員化コースで正社員への道が開ける!4つの変更点と注意点

2024.08.02 社労士コラム

正社員を目指したいけれど、なかなか踏み出せないでいるあなた。
非正規雇用で働き続けながらも、将来への不安やキャリアアップへの焦燥感を感じているのではないでしょうか。

「正社員になりたいけど、年齢的に厳しいのかな…」
「経験不足で、正社員としてやっていけるか不安だ…」

そんな悩みを抱えているあなたに朗報です。

正社員化を促進する助成金制度「キャリアアップ助成金正社員化コース」が、令和6年度から大幅な変更を迎え、より利用しやすくなりました。

この制度を活用すれば、正社員への転換をスムーズに進め、安定した雇用と充実したキャリアを手に入れることが可能になります。

本記事では、キャリアアップ助成金正社員化コースの制度変更によるメリットや注意点、申請手続きの流れを分かりやすく解説していきます。

正社員への道を切り開くための第一歩として、ぜひ最後まで読み進めてみてください。

キャリアアップ助成金正社員化コースとは

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の正社員化や雇用条件改善を促進するために設けられた制度です。
正社員化コースは、その中でも、有期雇用労働者を正社員化した場合に支給されるコースです。
令和6年度からは、助成金額の増額や対象労働者の要件緩和など、大幅な変更が行われました。

従来、正社員化コースは、非正規雇用から正社員に転換した後の6ヶ月間、給与を支払い続けた事業主に、57万円が支給されていました。

しかし、令和6年度からは、助成金額が80万円(大企業は60万円)に増額され、さらに支給期間も6ヶ月から12ヶ月に延長されました。
つまり、正社員化後1年間、給与を支払い続ければ、最大80万円の助成金を受け取ることが可能になったのです。

1: 助成金金額の増額

従来の57万円から80万円(大企業は60万円)に増額されました。
これは、正社員化を促進するための政府の強い意志を示すものであり、事業主にとって大きなメリットとなります。

2: 支給期間の延長

従来の6ヶ月から12ヶ月に延長されました。
これにより、事業主は、正社員化後の労働者の育成や定着に時間をかけられるようになり、より安定した雇用環境を構築することが期待されます。

キャリアアップ助成金正社員化コース4つの変更点

令和6年度のキャリアアップ助成金正社員化コースでは、上記の助成金額の増額や支給期間の延長に加え、さらに4つの大きな変更点があります。

1: 対象となる有期雇用労働者の要件緩和

従来は、雇用期間が6ヶ月以上3年以内である有期雇用労働者のみが対象でしたが、令和6年度からは、雇用期間が6ヶ月以上であれば、3年以上勤務している有期雇用労働者も対象となりました。
これにより、これまで助成金の対象外であった、長期間にわたって有期雇用で働いている労働者も、正社員化の機会を得ることが可能になりました。

2: 正社員転換制度導入の加算措置

新たに、正社員転換制度を導入する事業主への支援強化策が導入されました。
これまで就業規則に正社員への転換に関する具体的な規定を設けていなかった事業主が、新たにそのような規定を作成し、実際に正社員転換を実施した場合、助成金の支給額に20万円(大企業は15万円)が加算されます。

これは、事業主が積極的に正社員転換制度を導入することを促すための措置であり、より多くの労働者が正社員として活躍できる環境整備につながると期待されます。

3: 多様な正社員制度導入の加算措置

「多様な正社員制度」の規定に関する助成金の加算額が増額されました。
「多様な正社員」とは、短時間勤務の正社員、特定の職務に限定された正社員、または勤務地に限定された正社員などを指します。
これまで就業規則にこのような多様な正社員への転換を促す条項を設けていなかった事業主が、新規にその条項を設定し、実際に多様な正社員への転換を実施した場合、助成金の支給額に40万円(大企業は30万円)が追加されます。
この加算措置は、事業主が、労働者の多様なニーズに対応した柔軟な働き方を導入することを促進するものです。

4: 助成金の支給対象期間の拡充

助成金の支給対象期間が、現在の「1期(6ヶ月)」から「2期(12ヶ月)」へと拡充されました。
つまり、正社員化した後の期間が、従来の6ヶ月から12ヶ月に延長され、その期間中に給与を支払い続けた事業主に、助成金が支給されます。
助成金は2期に分けられ、各期に40万円ずつ、合計で80万円(大企業は60万円)が支給されます。
ただし、第2期の申請を行う際は、第1期と比較して労働条件が悪化していたり、賃金が減少していたりしてはならないという点に留意する必要があります。

キャリアアップ助成金正社員化コース申請の流れ

キャリアアップ助成金正社員化コースの申請には、以下のステップが必要となります。

1: 計画書の提出

まず、キャリアアップ計画書を作成し、管轄労働局に提出する必要があります。
計画書には、正社員化の目的、対象となる労働者、転換後の労働条件、教育訓練の内容などが具体的に記載されます。

2: 就業規則への明記

就業規則に、正社員への転換に関する規定を明記する必要があります。
この規定には、転換の基準、手続き、労働条件などが詳細に記載されます。

3: 労働基準監督署への届出

就業規則を労働基準監督署に届け出ます。
届出は、正社員転換を行う前に完了させる必要があります。

4: 従業員の正社員への転換

就業規則に基づき、従業員を正社員に転換します。
転換は、試験や面接など、公正な選考プロセスに基づいて行われる必要があります。

5: 転換後6ヵ月間の継続雇用・給与支払い

正社員に転換した後、6ヵ月間 継続して雇用し、給与を支払い続けます。

6: 支給申請

転換後6ヵ月分の賃金を支払った翌日から2ヵ月以内に、労働局へ支給申請を行います。
申請には、計画書、就業規則、労働者名簿、賃金台帳など、多くの書類が必要となります。

キャリアアップ助成金正社員化コース注意点

助成金の申請には、多くの注意点があります。

1: 法令違反のない就業規則や雇用契約書・帳簿類を準備する

就業規則や雇用契約書、労働条件通知書、タイムカード、出勤簿、給与明細書、賃金台帳といった書類は、対象労働者の在籍実態を理解するために必要なものです。
これらの書類には、労働法令が遵守され整合性があり、年間休日が125日とされているならば、出勤簿でも明らかにそれらが反映されている必要があります。

提出書類の中に労働法令違反が見つかれば、助成金の支給が不可能となってしまいます。
また、残業代が未払いの場合も、助成金の審査は不合格となります。

未払いの残業代を見直して支払えば問題ありませんが、一度にまとめて払う場合は、非常に高額になる可能性があります。
審査では、労働基準法に準拠した残業代、時間外手当、休日手当、深夜手当などの支払い状況がチェックされます。
重大な違反が見つかれば助成金の支給は不可能となります。

したがって法令遵守を最優先に考え、適切な労務管理を実践することが重要です。

2: キャリアアップ計画書は正社員へ転換する前に提出する

キャリアアップ助成金正社員化コースの申請プロセスは複雑であり、特に重要なポイントは、対象となる労働者を転換または直接雇用する前に、キャリアアップ計画書を提出することです。
申請手順が誤っていたり、抜け漏れがあったりして、申請を断念せざるを得ないケースが多く見受けられます。

申請手順に問題がある場合は、支給要件を満たさないため、支給の対象外となることに注意しましょう。
また、転換制度を準備し申請書類をそろえるには、相当な手間が必要です。

これらの作業が全て無駄になる可能性があるため、支給対象外とならないためにも、事前に細心の注意を払いましょう。

3: 就業規則に転換の制度を明記し、忘れずに労働基準監督署への届出をする

就業規則には、正社員化コースの要件を満たす文言を正確に明示する必要があります。
転換の手続きは、面接や筆記試験などの一連のステップを指し、要件は、勤続年数や人事評価、所属長の推薦など、明確かつ客観的に確認可能なものとなります。
多様な正社員化制度を定める場合には、勤務条件なども明記する必要があります。

条件が規定されていない場合、転換制度に不備があると見られ、助成金の支払いが行われなくなる事もあります。
また、従業員が10人以上の事業所で就業規則の届出を行っていない場合、助成金は支払われません。

10人未満の事業所は、法的には就業規則を労働基準監督署に提出する必要はありませんが、かわりに「就業規則の周知の申立書」の添付が必要です。

4: 転換後6ヵ月間の給与が3%以上UPしていることを確認する

正社員化コースの対象となる労働者を正社員化する場合は、転換前6ヵ月間と転換後6ヵ月間の賃金を比較し、転換後の賃金が3%以上アップしている必要があります。
なお、ここでの賃金とは、基本給と諸手当を含む総額を指します。

2021年4月より、賃金アップの算定に賞与は含めることが出来なくなっていますのでご注意ください。
具体的な金額は、必ず、厚生労働省より提供されている賃金上昇要件確認ツールを使用して計算して下さい。

5: 助成金の支給申請期限を厳守する

キャリアアップ計画書の提出は、対象者を正社員化するまでに実施しておく必要があります。
また支給申請は、対象の労働者に対して正社員店後6ヵ月目の賃金を支払った日の翌日から2ヵ月以内に、実施しなければなりません。

スケジュール管理を怠ってしまい、期限を過ぎてしまうと支給申請は受理されず、助成金は不支給となってしまいます。
支給申請時に提出を求められる書類は、支給申請書とは別に、出勤簿や賃金台帳、労働条件通知書に就業規則と多岐に渡ります。

これらの資料は、適法かつ整合性のとれたものでなくてはなりませんので、事前にしっかり整備して、万全の態勢で進めましょう。

まとめ

キャリアアップ助成金正社員化コースは、非正規雇用労働者の正社員化を促進するために、助成金額の増額、対象労働者の要件緩和、正社員転換制度導入の加算措置、多様な正社員制度導入の加算措置という4つの大きな変更点が行われました。

これらの変更によって、事業主はより積極的に正社員化を進めることができ、労働者はより多くの正社員雇用機会を得ることが期待されます。

しかし、助成金の申請には、法令違反のない就業規則や雇用契約書・帳簿類の準備、キャリアアップ計画書の提出、就業規則に転換の制度を明記し、労働基準監督署への届出、転換後6ヵ月間の給与が3%以上UPしていることの確認、助成金の支給申請期限の厳守など、多くの注意点があります。

これらの点をしっかりと理解し、適切な手続きを進めることで、正社員への道をスムーズに切り開くことができるでしょう。

大阪なんば駅徒歩1分
給与計算からIPO・M&Aに向けた労務監査まで
【全国対応】社会保険労務士法人 渡辺事務所

こちらの内容もお勧めです