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70歳までの就業機会確保を企業はどのように実現すべきか?改正高年齢者雇用安定法のポイントを解説

2024.08.25 社労士コラム

近年、人材不足が深刻化する中、企業は高齢者の雇用確保に大きな課題を抱えています。
2021年4月施行の改正高年齢者雇用安定法では、70歳までの就業機会確保が「努力義務」となりました。
これは企業にとって、従来の65歳までの雇用確保義務に加え、新たな責任と機会が生まれたことを意味します。

この改正は、高齢者の能力と経験を活かすことで企業の競争力強化を図るとともに、人生100年時代と言われる現代において、高齢者の社会参加と経済的自立を促進することを目的としています。

この記事では、改正高年齢者雇用安定法における70歳就業確保努力義務の内容、企業が70歳までの雇用を実現するために必要な施策、そしてこれからの高齢期の働き方について解説します。

70歳までの就業確保努力義務とは?

改正高年齢者雇用安定法では、企業に対し、65歳までの雇用確保に加え、70歳までの就業機会確保を努力義務として位置付けています。
これは、企業が積極的に高齢者を雇用し、活躍できる環境を整備するよう促すものです。

具体的には、企業は次のいずれかの措置を講じるよう努力義務を負います。

・ 70歳までの定年引き上げ
・ 定年制度の廃止
・ 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
・ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
・ 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

これらの措置は、企業の規模や業種を問わず、原則としてすべての企業に適用されます。
ただし、労働組合との合意や、従業員への十分な説明、透明性の確保など、法令で定められた手続きを踏む必要があります。

企業が70歳就業確保努力義務を履行するための具体的な施策としては、以下の点が挙げられます。

1:トップの意識改革

70歳までの雇用確保を経営戦略として位置付け、経営トップ自らがその重要性を認識し、全社的な取り組みを推進することが重要です。

2:高齢者に対する理解

高齢者の能力や経験を活かすための研修プログラムを導入したり、高齢者と若手社員の交流機会を設けたりすることで、互いの理解を深め、働きやすい環境を構築する必要があります。

3:働きやすい環境整備

高齢者の体力や健康状況に配慮した業務分担や勤務時間、休暇制度の導入、オフィス環境の改善などが求められます。

4:社員全体の意識啓発

全社員が、高齢者に対する理解を深め、積極的に協力し合う文化を醸成することが重要です。

70歳までの雇用推進に向けて必要な施策のポイント

企業が70歳までの雇用を推進するには、年齢に関わらず、社員が能力を最大限に発揮し、長く働き続けられる環境を整えることが重要です。
そのためには、以下の4つのポイントを意識した施策を導入することが有効です。

1:トップの意識改革

高齢者の雇用は、単なる社会貢献活動ではなく、企業にとって貴重な人材を獲得し、競争力を強化する機会です。
経営トップ自らが、高齢者の雇用を積極的に推進する姿勢を示すことが、社員全体に波及し、組織全体の意識改革につながります。

2:高齢者への理解

高齢者は、年齢を重ねることで、体力や集中力、学習能力などに変化が生じることがあります。
企業は、高齢者の特性を理解し、個々の能力や経験を活かせるよう、柔軟な働き方や業務の割り当てを行う必要があります。

3:働きやすい環境整備

高齢者が働き続けられるためには、身体的な負担を軽減し、安心して働ける環境を整えることが不可欠です。
具体的には、作業スペースの改善、身体への負担を軽減する機器の導入、フレックスタイム制やリモートワーク制度の導入などが考えられます。

4:社員全体の意識啓発

高齢者に対する理解を深め、協力し合う文化を醸成するために、全社員を対象とした研修プログラムを実施することが有効です。
研修では、高齢者の経験や知識の価値、高齢者と協働することのメリットなどを学ぶことが重要です。

これからの高齢期の働き方

人生100年時代と言われる現代において、高齢者の働き方は大きく変化しています。
従来のように、定年退職後に悠々自適に過ごすという選択肢は、もはや現実的ではありません。

高齢者は、体力や健康状態、ライフスタイルの変化を踏まえ、自分にとって最適な働き方を模索する必要があります。

しかし、働き方改革の進展に伴い、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を選択できるようになり、高齢者が自分のペースで働き続けることが容易になりました。
在職老齢年金や老齢年金の繰下げ受給など、高齢者の経済的な安定を支える制度も充実しており、高齢者が安心して働き続けられる環境が整いつつあります。

高齢者は、自分自身の経験や知識を活かして社会に貢献するだけでなく、新しい知識や技術を学び続けることで、更なる成長も期待できます。

70歳就業機会確保のための制度設計

70歳就業機会確保に向けて、企業は具体的な制度設計を行う必要があります。
ここでは、70歳就業機会確保のための制度設計のポイントをご紹介します。

1:定年引き上げ

企業は、定年年齢を引き上げることで、高齢者の雇用継続を促進できます。
定年引き上げは、従業員のモチベーション向上や人材の流出防止にもつながります。

2:継続雇用制度

継続雇用制度は、定年後に雇用契約を更新し、従業員が働き続けられるようにするための制度です。
再雇用制度、勤務延長制度など、様々な形態の継続雇用制度があります。

3:勤務延長制度

勤務延長制度は、定 年年齢を延長する制度です。
従業員は、定年年齢までと同じ条件で働き続けられます。

4:業務委託契約

業務委託契約は、企業が特定の業務を外部の個人または企業に委託する契約です。
高齢者は、自分の専門知識や経験を生かして、業務委託契約により企業に貢献できます。

5:社会貢献事業への従事

高齢者は、企業が実施する社会貢献事業に携わることで、社会に貢献できます。
ボランティア活動や地域貢献活動など、高齢者の経験や知識を活かせる活動が数多くあります。

まとめ

改正高年齢者雇用安定法では、70歳までの就業機会確保が「努力義務」となりました。
企業は、高齢者の能力や経験を活かして、70歳までの雇用を積極的に推進していく必要があります。

70歳までの雇用推進には、トップの意識改革、高齢者に対する理解、働きやすい環境整備、社員全体の意識啓発といった多角的な取り組みが必要です。

高齢者は、体力や健康状態、ライフスタイルの変化を踏まえ、自分にとって最適な働き方を模索する必要があります。
企業は、高齢者が安心して働き続けられるような環境整備や制度設計を行うことで、人材不足解消や企業の競争力強化に貢献できます。

 

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