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整理解雇とは?4つの要件と裁判例から解説します!

2024.08.25 社労士コラム

整理解雇とは、会社が経営上の必要性から行う人員削減の一種です。

しかし、他の解雇とは異なり、法的要件を満たさなければ、労働者から「不当解雇」として争われる可能性があります。
会社経営者や人事担当者は、従業員を解雇する必要性に迫られた際に、整理解雇の法的根拠や手続き、リスクを理解しておくことが不可欠です。

この記事では、整理解雇の法的根拠である4つの要件をわかりやすく解説します。

整理解雇とは何か?

整理解雇とは、会社が経営上の必要性から行う人員削減の一種であり、労働契約を一方的に解除する行為です。
従業員に非があるわけではなく、会社側の事情によって行われるため、労働者にとって非常に厳しい状況となる場合があります。

しかし、整理解雇は、労働基準法や判例によって厳格な法的要件が定められており、これらの要件を満たさなければ、労働者から「不当解雇」として争われる可能性があります。
整理解雇は、経営状況が厳しい会社にとって、やむを得ない選択となる場合もありますが、法的リスクを理解し、適切な手続きを踏むことが非常に重要です。

理解雇を適法に行うための4つの要件

整理解雇を適法に行うためには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。

・経営上の必要性
・解雇回避努力
・被解雇者選定の合理性
・手続きの相当性

それぞれの要件について、詳しく見ていきましょう。

1:経営上の必要性

会社が経営上の必要性から人員削減を行う必要があることを客観的に証明する必要があります。
具体的には、会社の財務状況、業績推移、将来の見通しなどを示す資料を準備しておく必要
があります。

例えば、赤字経営が続いていること、売上高が減少していること、競合他社の台頭による市場シェアの低下などが挙げられます。

ただし、単に経営が厳しいというだけでは、人員削減の必要性を認められない場合があります。
会社が経営上の必要性を主張するには、具体的な根拠を示すことが重要です。

2:解雇回避努力

会社は、解雇以外の手段で経営状況を改善できないかどうか、あらゆる努力を尽くす必要があります。
具体的には、以下のような手段が考えられます。

・希望退職者の募集
・ 派遣社員の削減
・パート社員や契約社員の削減
・役員報酬の削減
・賃金の減額
・労働時間の短縮
・効率化による業務の改善
・新規事業の創出
・設備投資の抑制

これらの手段を講じても経営状況が改善しないことが客観的に認められる場合にのみ、整理解雇が認められる可能性があります。

3:被解雇者選定の合理性

会社は、解雇の対象者を客観的な基準に基づいて選定する必要があります。
従業員個人の事情や感情ではなく、会社全体の利益を考慮して、合理的かつ公平な基準で選定する必要があります。
具体的な選定基準としては、以下の様なものが考えられます。

・勤務成績
・職務能力
・会社への貢献度
・年齢
・職種
・扶養家族の状況

しかし、年齢や性別などを基準に解雇することは、差別につながる可能性があり、法的リスクが高いので注意が必要です。

4:手続きの相当性

会社は、解雇の対象者に対して、解雇の理由を説明し、十分な協議を行う必要があります。
具体的には、解雇予告、解雇理由の説明、解雇に関する相談、労働組合との団体交渉などを適切に行う必要があります。
解雇の対象者が労働組合に加入している場合は、労働組合と十分な協議を行う必要があります。

整理解雇に関する注目の裁判例

実際に整理解雇が争われた裁判例をいくつか紹介することで、整理解雇の4要件がどのように判断されるのか、具体的な例を理解することができます。

過去には、企業が整理解雇の要件を満たしていないとして、裁判で敗訴したケースも数多く存在します。
これらの裁判例を参考に、会社は整理解雇を行う際に、法的リスクを最小限に抑えるための対策を検討する必要があります。

裁判例1

会社が、経営上の必要性を主張するために、財務資料や業績推移などを提出しましたが、裁判所は、これらの資料が不十分であると判断し、整理解雇を無効としました。
裁判所は、会社が経営上の必要性を主張するには、具体的な根拠を示す必要があり、単に資料を提出しただけでは不十分であると判断しました。
この裁判例からわかることは、会社は、経営上の必要性を主張するために、具体的な根拠となる資料を十分に準備しておく必要があるということです。

裁判例2

会社が、解雇の対象者を選定する際に、年齢を基準にしたため、裁判所は、年齢を基準にした解雇は差別につながるとして、整理解雇を無効としました。
裁判所は、会社が解雇の対象者を選定する際には、客観的な基準に基づいて行う必要があり、年齢を基準にした選定は、合理的ではないと判断しました。
この裁判例からわかることは、会社は、解雇の対象者を選定する際に、年齢などの差別的な基準を設けないように注意する必要があるということです。

裁判例3

会社が、解雇の対象者に対して、解雇の理由を説明することなく、解雇予告を行い、解雇しました。
裁判所は、会社が解雇の対象者に対して、解雇の理由を説明する義務があるにもかかわらず、説明を行わなかったため、整理解雇を無効としました。
裁判所は、会社は、解雇の対象者に対して、解雇の理由を説明し、十分な協議を行う必要があると判断しました。
この裁判例からわかることは、会社は、解雇の対象者に対して、解雇の理由を説明し、十分な協議を行う必要があるということです。

整理解雇について 対象者が納得しない場合はどうする?

従業員が整理解雇に納得しない場合は、会社は、従業員との交渉を丁寧に進める必要があります。
従業員との交渉においては、以下の点を意識することが重要です。

・解雇の理由を明確に説明する
・解雇回避努力について説明する
・被解雇者選定の基準を説明する
・解雇後のサポートについて説明する

従業員が納得できない場合は、労働組合に相談したり、弁護士に相談したりするよう促すことも必要です。
従業員との交渉がうまくいかず、訴訟に発展する可能性もあることを認識しておく必要があります。

訴訟に発展した場合、会社は、裁判で整理解雇の有効性を主張する必要があります。
裁判で整理解雇の有効性を主張するには、整理解雇の4要件をすべて満たしていることを証明する必要があります。
裁判で敗訴した場合、会社は、従業員に対して損害賠償を支払う義務を負う可能性があります。

したがって、会社は、整理解雇を行う際には、法的リスクを十分に認識し、適切な対応をする必要があります。

まとめ

整理解雇は、会社にとってやむを得ない選択となる場合もありますが、労働者にとって非常に厳しい状況となる場合があります。
会社は、整理解雇を行う際には、法的要件を満たしていることを確認し、従業員との交渉を丁寧に進める必要があります。

また、裁判で敗訴した場合、会社は、従業員に対して損害賠償を支払う義務を負う可能性もあることを認識しておく必要があります。
整理解雇は、法的リスクの高い行為であるため、会社は、専門家のアドバイスを得ながら、慎重に判断する必要があります。

 

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