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【大阪難波の社労士】変形労働時間制の内容とは?企業側のメリットも紹介
大阪難波を中心に、全国規模で企業の労務対応をサポートしている、社会保険労務士法人渡辺事務所です。
繁忙期と閑散期が明確になっている企業におすすめなのが、変形労働時間制の導入です。しかし、そもそもどのような内容なのか、わからない方も多いのではないでしょうか。
本記事では変形労働時間制とは何かについて、企業側のメリットと一緒にわかりやすく紹介します。
変形労働時間制とはどのような内容?
変形労働時間制とは、労働時間を年や月単位などで計算する制度のことです。労働基準法では、労働時間に関する基本的なルールとして「1日8時間」「1週40時間(特例措置対象事業場は44時間)」と定めています。
しかし、変形労働時間制は一定の期間内における労働時間を業務量に合わせて、フレキシブルに調整できるのが特徴です。特定の季節や月初め・月末、特定の曜日など、忙しくなるタイミングがすでに決まっている企業・事業場では、より効率的な働き方につながるでしょう。
厚生労働省が実施した「令和5年就労条件総合調査」によると、変形労働時間制を導入している企業割合は59.3%でした(後述するフレックスタイム制を含む)。以下は内訳です。
企業の規模 |
変形労働時間制を |
変形労働時間制を導入している企業のうち、採用している制度の種類の割合(複数回答) | ||
1年単位の変形労働時間制 | 1カ月単位の変形労働時間制 | フレックスタイム制 | ||
1,000人以上 | 77.3% | 19.1% | 49.1% | 30.7% |
300人~900人 | 68.6% | 24.6% | 38.3% | 17.2% |
100人~299人 | 67.9% | 33.5% | 29.9% | 9.4% |
30人~99人 | 55.3% | 31.9% | 20.0% | 4.2% |
全体 | 59.3% | 31.5% | 24.0% | 6.8% |
企業規模が大きいところほど、変形労働時間制を導入している割合が高くなっています。また制度を導入している企業規模が小さいところほど、1年単位の変形労働時間制を採用している傾向があるとわかります。
参照:厚生労働省 徳島労働局「変形労働時間制」
参照:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況:調査の概要」
変形労働時間制の主な3つの種類
変形労働時間制は主に、1年単位・1カ月単位・1週間単位の3種類に分けられます。以下で、それぞれの特徴を見ていきましょう。
1年単位の変形労働時間制
1カ月以上1年未満で労働時間を設定するのが、1年単位の変形労働時間制です。夏や冬といったシーズンごとに業務量に変化がある業種・職種、ゴールデンウィークや年末年始など、特定期間に忙しくなる業種・職種への導入が向いています。
繁忙期に長い労働時間を設定し、反対に閑散期に短い労働時間を設定できます。
労働時間や時刻などのルールは、次の通りです。
- 1日の労働時間の上限:10時間
- 1週間の労働時間の上限:52時間
- 1週間平均の労働時間:40時間
- 休日の付与日数:週1日
また残業時間の算出には日ごと・週ごと・設定期間全体と、全部で3つの方法があります。
基準 | 残業時間の算出方法 |
日ごと |
所定労働時間が8時間を超えている日:超えて勤務した時間すべて |
週ごと |
所定労働時間が40時間を超えている週:超えて勤務した時間すべて |
設定期間全体(1年間) | 法定労働時間を超えて勤務した時間すべて(365日の年は2091.4時間、366日の年は2085.7時間) |
制度導入には、労使協定の締結と労働基準監督署への届出が必要です。
また始業・終業の時刻や休憩時間、休日に関する事項を就業規則に記載する必要があるため、常時10人以上の従業員がいる場合は就業規則の改訂と届出が求められます。常時10人未満の場合は、就業規則に準ずるものを作成し、従業員への周知のみで問題ありません。
1カ月単位の変形労働時間制
1カ月単位の変形労働時間制では、月ごとに週の労働時間を調整できます。変形労働時間制を導入している企業の中で、従業員数が多い企業がより採用しているのが特徴です。
各月の労働時間の上限に即して、各日・各週で労働時間を振り分けます。1週間あたりの法定労働時間を40時間とした場合、ひと月の暦日数に合わせた労働時間の上限は以下の通りです。
- 28日:160.0時間
- 29日:165.7時間
- 30日:171.4時間
- 31日:177.1時間
1週間平均の労働時間は40時間ですが、旅館・飲食店・ゴルフ場・浴場業といった特例措置対象事業場に該当すれば、44時間に増やせます。
残業時間の算出には日ごと・週ごと・設定期間全体と、3つの方法があります。
基準 | 残業時間の算出方法 |
日ごと |
所定労働時間が8時間を超えている日:超えて勤務した時間すべて |
週ごと |
所定労働時間が40時間(44時間)を超えている週:超えて勤務した時間すべて |
設定期間全体(1カ月) | 法定労働時間を超えて勤務した時間すべて |
制度導入に必要なものは、従業員数によって異なります。常時10人以上の従業員がいる場合は、労使協定の締結と労働基準監督署への届出、または就業規則の改訂と届出が必要です。
常時10人未満の場合は、労使協定の締結と労働基準監督署への届出、または就業規則に準ずるものの作成と従業員への周知が求められます。
参照:厚生労働省 徳島労働局「法定労働時間」
1週間単位の変形労働時間制
従業員数30人未満の小売業・旅館・料理店・飲食店といったサービス業のみに適用できるのが、1週間単位の変形労働時間制です。曜日によって業務量に偏りがあり、代理対応ができないといった小規模の企業・事業場に向いています。
労働時間や時刻などのルールは、次の通りです。
- 1日の労働時間の上限:10時間
- 1週間平均の労働時間:40時間
- 休日の付与日数:週1日、または4週4日
残業時間の算出には日ごと・設定期間全体と、全部で2つの方法があります。
基準 | 残業時間の算出方法 |
日ごと |
所定労働時間が8時間を超えている日:超えて勤務した時間すべて |
設定期間全体(1週間) | 法定労働時間を超えて勤務した時間すべて |
制度導入には、労使協定の締結と労働基準監督署への届出が必要です。
また始業・終業の時刻や休憩時間、休日に関する事項を就業規則に記載する必要があるため、常時10人以上の従業員がいる場合は就業規則の改訂と届出が求められます。常時10人未満の場合は、就業規則に準ずるものを作成し、従業員への周知のみで問題ありません。
就業規則に日ごとの労働時間を定める必要はないものの、遅くても前週までには、書面にて従業員へ労働時間を知らせます。
変形労働時間制とフレックスタイム制・裁量労働制との違い
変形労働時間制と似たものに、フレックスタイム制や裁量労働制があります。
フレックスタイム制は従業員が始業時間と就業時間を決められ、1日の労働時間を実労働時間として計算する制度です。裁量労働制は「みなし労働時間」を定めた上で、従業員が働く時間を自由に決められます。
裁量労働制については「【大阪難波の社労士】裁量労働制の仕組みとは?導入時の注意点も紹介」で解説しているため、ぜひご覧ください。
変形労働時間制による企業側のメリット
変形労働時間制を導入すると、企業側にはどのようなメリットが生まれるのでしょうか。主なメリットを3つ紹介します。
残業代を削減できる
繁忙期と閑散期に合わせて労働時間を調整できるため、残業代の削減に役立ちます。
ただし、たとえば所定労働時間が6時間の日と10時間の日の2つを設定しており、恣意的な残業代カットを目的に、毎日10時間労働が当然のようにするのは違法です。
従業員の健康管理につながる
閑散期には労働時間を短くして従業員の体力を温存させ、繁忙期にしっかり働いてもらうことで、従業員の健康管理につなげられるでしょう。
またメリハリを持って働くことで従業員の仕事に対するモチベーションが上がり、生産性のアップも期待できます。
企業イメージがアップする
変形労働時間制による柔軟な働き方やライフワークバランスの実現は、多くの求職者にとって魅力的に映ります。
企業イメージがアップし、より優秀な人材の確保と定着のチャンスが生まれるでしょう。
まとめ
変形労働時間制の内容とは、労働時間を年や月単位などで計算するものです。企業・事業場によっては繁忙期と閑散期が明確に分かれており、制度の導入によって状況に合わせた効率的な働き方が実現します。
これから制度の導入を検討する場合は、まず従業員の勤務実績をチェックするところから始めましょう。残業が多い時期と少ない時期がわかると、労働時間の配分を適切に検討できます。
社会保険労務士法人渡辺事務所は、大阪市中央区難波を拠点に全国対応しております。オンラインにも対応し、遠方の方もご利用可能です。変形労働時間制の導入に必要な就業規則の改訂や労務アドバイスなどに応じているため、ぜひお気軽にご相談ください。
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