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給与の不利益変更とは?法的リスクと対応策を解説します

2025.04.20 社労士コラム

給与の不利益変更は、企業経営にとって難しい課題です。
従業員の生活に直結する問題だけに、法的なリスクを理解し、適切な手続きを踏むことが不可欠です。
不利益変更を行う際の注意点や、リスク回避策を検討することは、企業の存続にも関わる重要な事項と言えるでしょう。
今回は、給与の不利益変更に関する法律的な根拠、具体的な手順、リスク回避策などを解説します。

給与の不利益変更の法的根拠と注意点

労働契約法と不利益変更禁止の原則

労働契約法は、労働条件の変更について、労働者と使用者の合意を必要とする原則を定めています。
一方的な変更は、原則として無効となります。
これは、賃金、労働時間、休日など、労働条件のあらゆる事項に適用されます。
使用者側は、労働者の生活に大きな影響を与えることを認識し、慎重な対応が求められます。

労働者の同意取得の必要性と方法

給与の不利益変更を行うには、原則として労働者の個別の同意が必要です。
同意を得るためには、変更の内容、理由、労働者への影響などを丁寧に説明することが重要です。
説明は、書面で行うことが推奨され、口頭のみでは、後にトラブルになる可能性があります。

自由意思に基づく同意の確保

同意は、労働者の自由な意思に基づいて行われる必要があります。
強要や威圧的な態度で同意を得ようとすることは、後々、訴訟になった際に、同意が無効とされる可能性があります。
労働者の理解と納得を得るための十分な時間と説明を確保することが大切です。

同意書作成のポイント

同意書を作成する際には、変更内容を明確に記載し、労働者が内容を理解していることを確認する必要があります。
また、同意を得た日時、労働者の署名・捺印などを必ず記載しましょう。
不明瞭な点があると、後に争いの原因となる可能性があります。

口頭での合意の問題点

口頭での合意は、証拠が残らないため、後日のトラブルに繋がりやすいです。
裁判になった場合、口頭での合意があったことを立証するのは困難です。
書面による合意を必ず残すようにしましょう。

不利益変更における使用者側のリスクと責任

労働者の同意を得ずに不利益変更を行った場合、労働条件変更が無効となり、未払い賃金の請求や損害賠償請求をされるリスクがあります。
また、企業イメージの悪化にも繋がりかねません。

給与の不利益変更の実施手順とリスク回避

就業規則変更による給与不利益変更

就業規則の変更によって給与の不利益変更を行うことも可能です。
ただし、変更には合理的な理由が必要で、労働者の受ける不利益の程度、変更の必要性、変更後の就業規則の相当性などを考慮する必要があります。
変更後は、適切な方法で労働者に周知する必要があります。

労働協約による給与不利益変更

労働組合がある企業では、労働協約によって給与の不利益変更を行うことができます。
労働組合との協議を行い、合意を得ることで、個々の労働者との個別同意が不要になります。
ただし、合意形成には時間と労力を要します。

個別同意による給与不利益変更

個別同意による変更は、労働者一人ひとりと合意する必要があります。
労働者との信頼関係を維持するため、丁寧な説明と十分な協議が不可欠です。

人事考課に基づく給与変更

人事考課に基づく給与変更は、評価基準を事前に明確にしておき、労働者に周知することが重要です。
評価基準が不透明な場合、不公平感や不満が生じ、トラブルにつながる可能性があります。

降格に伴う給与変更

降格に伴う給与変更を行う際には、降格の理由を明確に示し、労働者との間で納得のいく説明を行うことが重要です。
不当な理由による降格は違法となる可能性があります。

給与不利益変更におけるコミュニケーション戦略

労働者とのコミュニケーションは、不利益変更を円滑に進める上で極めて重要です。
変更の必要性を丁寧に説明し、労働者の不安や疑問を解消することで、合意形成を促進できます。

リスク回避のための事前準備

不利益変更を行う前に、経営状況や法的なリスクを十分に分析し、適切な対策を講じる必要があります。

裁判例から学ぶ教訓

過去の裁判例を参考に、不利益変更を行う際の注意点やリスクを学ぶことができます。
裁判例を分析することで、自社が不利益変更を行う際にどのような点に注意すべきかを理解することができます。

まとめ

給与の不利益変更は、労働契約法に基づき、労働者の同意が原則として必要です。
同意を得る際には、自由意思に基づくことを確認し、十分な説明と丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。
就業規則や労働協約による変更も可能ですが、合理性や周知が求められます。
不利益変更は、労使トラブルにつながるリスクがあるため、事前に弁護士に相談し、適切な手順を踏むことが重要です。
リスク回避のための対策を講じることで、企業と従業員の双方にとって最善の結果を目指しましょう。

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