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有給休暇取得義務化を徹底解説!会社と従業員の双方にとって有益な制度を活用しよう

2024.08.04 社労士コラム

近年、労働者のワークライフバランスの重要性が叫ばれる中、従業員の休暇取得を促進するための制度として注目されているのが、「有給休暇取得義務化」です。
2019年4月の法改正により、従業員が希望していなくても、年5日の年次有給休暇取得が会社側に義務付けられました。

これは、従業員の健康維持や労働意欲の向上、ひいては企業の生産性向上に繋がる重要な制度と言えます。

しかし、有給休暇取得義務化の制度内容や具体的な運用方法について、理解が十分でない企業も多いのではないでしょうか。

本記事では、有給休暇取得義務化に関する法律の内容を分かりやすく解説し、会社と従業員の双方にとって有益な制度運用を実現するための具体的な方法や注意点について詳しく解説していきます。

人事担当者や経営者の方にとって、有給休暇取得義務化の理解は、従業員の福利厚生、労務管理、法令遵守の観点から非常に重要です。
本記事を通して、有給休暇取得義務化に関する理解を深め、適切な制度運用を実現することで、従業員の働きがいと企業の持続的な成長に貢献していきましょう。

有給休暇取得義務化とは

2019年4月の法改正により、従業員が希望していなくても、年5日の年次有給休暇取得が会社側に義務付けられました。
従来は年休の取得日数について義務はありませんでしたが、年休取得が義務化された結果、社員が希望をしていなくても、年に5日の年休を取得させなければいけなくなりました。
つまり、従来通りの意識のままでいると、社員が特に年休を取りたいと言ってこないので、そのまま年休を取らせずに1年が終わり、結果として法律違反を犯してしまうという可能性が十分にあるということです。

1: 年休取得義務化の対象者

有給休暇の義務化の対象者は、年休が10日以上付与される労働者です。
法定年休が10日に満たない労働者は対象ではありません。

2: 時季指定と労働者の意見尊重

使用者は、年休を付与した日から1年以内に、時季を指定して5日の年休を取得させなければなりません。
時季の決め方については、使用者が労働者に意見を聞き、労働者の意見を尊重して決定します。
会社の都合だけで、年休取得の時期を決められないということです。
本人の希望をきちんと聞き取る必要があります。

3: 年休管理簿の作成と保存義務

さらに、使用者は労働者ごとに年休の管理簿(年次有給休暇管理簿)を作成、3年間保存する義務があります。
管理簿は、紙ではなくシステムなどで保存しても差し支えありませんが、すぐに印刷できるようにしておきましょう。

4: 5日の年休取得済み従業員

すでに5日以上の年休を取得している労働者の場合は、会社側が時季を指定することはできません。

5: 中途採用された従業員

中途採用された労働者の場合、入社した日から6ヶ月後に10日間の年休が付与されます。
4月入社の労働者とタイミングはずれてしまうかもしれませんが、入社のタイミングから数えて6ヶ月後、1年と6ヶ月後、2年と6ヶ月後、といったように年休が付与されていきます。
年休を付与されてから1年間の期間に、年休5日間を取得します。

6: 副業をしている従業員

副業をしている労働者の場合は、副業先でも年休を取得できます。
一例として、Aさんがメインの職場で10日の有給休暇を取得し、副業先(パート)でも7日の有給休暇を取得したとします。
この場合、Aさんは二社でそれぞれ別に有給休暇を取得し、合計で17日間の有給休暇を取得します。

有給休暇の発生要件と付与ルール

有給休暇を取得するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
ここでは、有給休暇が発生する要件と、付与ルールについて詳しく解説していきます。

1: 出勤率8割以上

年次有給休暇は、従業員が雇い入れ日から6ヶ月間継続勤務し、その出勤率が8割以上の場合に付与されます。
出勤率は、「出勤日÷全労働日(その期間の総歴日数から所定休日や不可抗力による休業日等を除いた日数)×100」で計算できます。

2: 6ヶ月間継続勤務

有給休暇の発生要件として、雇い入れ日から6ヶ月間継続勤務していることも必要です。

3: 有給休暇の増え方

年次有給休暇は、フルタイム労働者の場合、入社後半年が経過した時点で10日以上を付与することが労働基準法で定められています。
その後は1年ごとに日数を増やして付与することが決められています。

4: 有給休暇の上限日数

毎年2日ずつ有給休暇の日数を増やしていき、入社から6年半を迎えて20日に達した後は毎年20日ずつ付与します。
したがって、有給休暇の付与日数の上限は1年につき20日となっています。

5: 有給休暇の有効期限と繰越

有給休暇には2年間の有効期限があり、その期限内であれば繰越することができます。
そのため、前年度と当年度分の有給休暇を使っていない場合は最大で40日間保有することができます。

有給休暇取得日の賃金計算をおこなう3つの方法

有給休暇を取得した際の賃金計算方法について解説します。
労働基準法では、以下の3つの計算方法が認められています。

1: 通常勤務と同じ金額を支払う方法

有給休暇の取得日も通常勤務と同じ金額の賃金を支払う方法です。
月給制のフルタイムの従業員の場合、何日有給休暇を取得したとしても、その期間を通常通り出勤したとみなして給与計算すればよいため、事務処理が大きく簡略化される点がメリットです。
また、一定の所定労働時間で働く時給制のパートやアルバイトに対しても、通常の勤務と同様に所定労働時間×時給で有給休暇の計算がおこなえます。

2: 平均 賃金を求める方法

平均賃金を有給分の給与として支給する場合には、以下の2通りの計算をして、金額が大きい方を使用します。

・直近3ヵ月の賃金の総額÷休日を含んだ全日数
・直近3ヵ月の賃金の総額÷労働日数で割った額×0.6

3: 標準報酬月額を用いる方法

健康保険料の算定に使う「標準報酬月額」を用いて有給休暇の賃金計算をする方法です。
標準報酬月額÷30
すでに算出済みの標準報酬月額を用いて計算すればよいため、平均賃金を計算する方法よりも簡単です。

退職時の有給休暇について

従業員の退職時の有給休暇の処理について解説します。
退職時には、有給休暇を使い切って退職するのが理想ですが、業務の都合などで使い切れない場合もあります。

1: 有給休暇の買取は原則NG

本来有給休暇とは、給与を減らされることなく従業員に休息を取ってもらうための休みのため、買取は原則NGとされています。
ただし、労働基準法で定められた以上の有休を与えている場合や、2年の有効期限が過ぎて失効する有休の買取は例外的に認められています。

2: 退職時のみ例外的に認められるケース

退職後は休暇を取得する権利がなくなってしまうため、退職時に限り会社によっては買取を行っているところもあります。
しかし、退職時の有給休暇の処理については法律では定められていないため、精算を行うか否かは各社の判断に任せられています。

3: 買取を行う際の計算方法

もし買取を行う場合には、有給休暇を通常通り取得した際の金額と同じ方法で計算を行うのが望ましいでしょう。

4: 買い取った有休の扱い方

買い取った有休を賞与として扱うか退職所得として扱うかについては、自社の就業規則を確認しましょう。

まとめ

本記事では、有給休暇取得義務化の制度内容、発生要件と付与ルール、賃金計算方法、退職時の有給休暇処理について解説しました。
有給休暇取得義務化は、従業員の健康維持や労働意欲の向上、ひいては企業の生産性向上に繋がる重要な制度です。

会社は、従業員が安心して有給休暇を取得できるよう、制度の理解を深め、適切な運用を行う必要があります。
従業員も、自分の権利を理解し、積極的に有給休暇を取得することで、仕事とプライベートのバランスを取り、より充実した生活を送ることができるでしょう。

有給休暇取得義務化は、会社と従業員の双方にとって有益な制度です。
本記事の内容を参考に、有給休暇取得義務化を有効活用し、働きがいのある職場環境を実現していきましょう。

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