新着情報
海外赴任の際の社会保険で知っておくべきこと!手続きから制度まで解説
海外赴任が決まった方にとって、社会保険は大きな不安材料の一つではないでしょうか。
海外で働いている間も日本の社会保険は適用されるのか、万が一社会保険の資格を失ったらどうなるのかといった疑問をお持ちの方も少なくないでしょう。
海外赴任中の社会保険は、複雑な制度で、理解するのが難しいと感じられるかもしれません。
本記事では、海外赴任中の社会保険について、適用範囲から手続き、資格喪失時の対策、さらには社会保障協定まで、わかりやすく解説していきます。
海外赴任社会保険の適用範囲
海外赴任中の社会保険の適用範囲は、日本国内の事業所との雇用関係が重要となります。
日本国内の事業所と雇用関係があれば、海外赴任中であっても、日本の社会保険に加入し続けられます。
1:日本国内の事業所との雇用関係
海外赴任中の社会保険適用は、日本国内の事業所との雇用関係が継続しているかどうかで判断されます。
具体的には、
・給与の支払い
・労務の提供
・指揮命令形態
・人事労務管理
などの要素を総合的に判断されます。
一般的には、日本国内の事業所から給与が支払われている場合は、雇用関係が継続していると考えられ、社会保険の資格を維持できます。
しかし、赴任先の海外企業から給与が支払われている場合、日本国内の事業所との雇用関係が薄れる可能性があります。
この場合、社会保険の資格を失う可能性があるため、注意が必要です。
2:海外赴任中の社会保険適用例
海外赴任中の社会保険適用について、具体的な例を挙げながら説明します。
・日本国内の事業所から給与を全額支給されている場合
この場合、海外赴任中であっても、日本国内の事業所との雇用関係が継続しているため、日本の社会保険に加入し続けられます。
・日本国内の事業所から一部支給され、残りは海外企業から支給されている場合
この場合、日本国内の事業所との雇用関係が継続しているかどうかは、それぞれのケースで判断する必要があります。
・日本国内の事業所との雇用関係を解消し、海外企業に移籍した場合
この場合、日本国内の事業所との雇用関係が解消されているため、日本の社会保険の資格を失います。
3:社会保険適用範囲の判断基準
海外赴任中の社会保険適用範囲を判断する際には、以下の点に注意する必要があります。
・赴任先の国の法律
・日本と赴任先の国の社会保障協定
・日本国内の事業所との雇用関係
・給与の支払い形態
・勤務時間や業務内容
・人事労務管理
これらの要素を総合的に判断することで、海外赴任中の社会保険適用範囲を明確にできます。
海外赴任社会保険を喪失した場合の対策
海外赴任中に社会保険の資格を喪失した場合、日本の医療費や年金の受給に影響が出てしまう可能性があります。
そこで、社会保険の資格を喪失した場合の具体的な対策について解説します。
1:健康保険の資格喪失
健康保険の資格を喪失した場合、次の2つの対策があります。
・健康保険任意継続制度
健康保険任意継続制度は、会社を退職した後、2年間、健康保険の資格を維持できる制度です。
ただし、この制度は、会社が負担していた保険料分も含めて、全額自己負担となります。
・国民健康保険への加入
住民票を除票しない限り、国民健康保険に加入することができます。
ただし、国民健康保険は、健康保険に比べて保険料が高額になる場合があります。
2:厚生年金の資格喪失
厚生年金の資格を喪失した場合、国民年金保険に任意加入できます。
国民年金保険に任意加入するには、次の2つの要件を満たす必要があります。
・日本国籍を有する20歳~60歳未満の者
・日本国内で保険料の納付ができる者
国民年金保険は、将来の年金受給額に影響するため、海外赴任中であっても、任意加入を検討する価値はあります。
3:海外医療費の請求
海外で医療費を支払った場合、日本国内の健康保険組合などに「海外医療費」として請求できます。
ただし、海外医療費の請求には、必要な添付書類や和訳など、手間がかかります。
4:社会保険喪失時の注意点
社会保険の資格を喪失した場合、日本の医療費や年金の受給に影響が出るだけでなく、海外での医療費負担も大きくなる可能性があります。
海外赴任前に、社会保険の資格喪失のリスクを理解し、適切な対策を検討することが重要です。
□海外赴任社会保障協定
海外赴任中の社会保険に関する国際的な取り決めとして、社会保障協定があります。
社会保障協定は、日本と他の国との間で締結されており、社会保険の二重加入や保険料の無駄な負担を避けるために、社会保険制度の適用を調整するものです。
1:社会保障協定の役割
社会保障協定は、日本と他の国との間で締結されており、社会保険の二重加入や保険料の無駄な負担を避けるために、社会保険制度の適用を調整するものです。
2:社会保障協定の内容
社会保障協定には、次の2つの内容が含まれています。
・適用調整
適用調整は、海外赴任中の社会保険制度の適用を、日本と赴任先の国のどちらの制度に適用するかを定めるものです。
一般的には、5年を超えない海外赴任の場合は、日本の制度が適用され、5年以上の場合には、赴任先の国の制度が適用されます。
・保険期間の通算
保険期間の通算は、日本と赴任先の国の社会保険制度への加入期間を通算して、年金受給資格要件を満たせるようにするものです。
3:社会保障協定の対象国
2023年現在、日本は18か国と社会保障協定を締結しています。
・アメリカ合衆国
・カナダ
・イギリス
・フランス
・ドイツ
・イタリア
・スペイン
・オランダ
・ベルギー
・スイス
・オーストリア
・スウェーデン
・デンマーク
・フィンランド
・ノルウェー
・オーストラリア
・ニュージーランド
・韓国
海外赴任を検討する際は、赴任先の国と日本との間に社会保障協定が締結されているかどうかを確認することが重要です。
まとめ
海外赴任中の社会保険は、国内とは異なる制度や手続きがあり、理解するのが難しいと感じられるかもしれません。
しかし、本記事で解説した内容を参考に、事前にしっかりと知識を深めておくことで、安心して海外生活を送れます。
特に、海外赴任中の社会保険適用範囲、資格喪失時の対策、そして社会保障協定の役割と対象国について理解しておくことが重要です。
海外赴任を控えている方は、本記事の内容を参考に、海外赴任前に社会保険についてしっかりと準備を行い、安心して海外生活を送れるようにしましょう。
大阪なんば駅徒歩1分
給与計算からIPO・M&Aに向けた労務監査まで
【全国対応】社会保険労務士法人 渡辺事務所