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年収の壁と社会保険の変化についてご紹介!

2024.08.20 社労士コラム

年収の壁は、税金や社会保険制度において特定の収入水準を超えると、各種の税制優遇や社会保障の対象から外れる現象を指します。
社会保険の扶養は、家族や親族を経済的に支える仕組みであり、そのメリットやデメリットについても詳しく解説します。

年収の壁とは

年収の壁とは、税金や社会保険などの公的制度において、特定の年収を超えると、それらの制度の適用を受けられなくなる基準を指します。
これは、日本の税制や社会保険制度において重要な概念であり、個人や家庭の経済状況に直接影響を及ぼす要素です。

まず、税金における年収の壁としては、配偶者控除があります。
所得税や住民税の申告時には、配偶者の収入や年収によってその控除額が変わりますが、一定の年収を超えると控除の対象から外れることがあります。
これにより、家計の税負担が増加する可能性があります。

さらに、社会保険における年収の壁も存在します。
例えば厚生年金では、配偶者の扶養対象から外れる基準が設けられています。
企業の規模や従業員の数によって異なるため、従業員数が一定数を超える場合や、月収が一定額を超える場合には、配偶者が厚生年金の扶養から外れることになります。
これにより、家計の社会保険料負担が変化することになります。

年収の壁が設けられる理由には、税制や社会保険制度の公平性や財政の持続可能性があります。
例えば、高所得者に対しては、一定の基準を超えた場合には税制や社会保険の恩恵を縮小させることで、社会全体の負担を均等に配分しようとする考えがあります。
個人や家庭にとっては、年収の壁を意識した経済計画が重要です。
特に収入が増加した場合、税金負担や社会保険料の変動を事前に把握し、適切な節税対策や財務プランニングを行うことが求められます。

また、企業側も従業員の年収の増減に応じて、適切な福利厚生の提供や労務管理を行うことが必要です。
このように、年収の壁は個人や家庭の経済活動に大きな影響を与える重要な要素であり、社会的な公平性と財政の持続可能性を考慮した制度設計の一環として位置付けられています。

 

年収の壁と社会保険の変化

2023年10月からの「年収の壁」には、特に社会保険に関する重要な変化があります。
これにより、特定の年収を超えた場合の社会保険の適用条件が調整される見込みです。

具体的には、年収が106万円を超えると、従業員数が101人以上の企業では社会保険の扶養から外れるルールが適用されます。
また、従業員数が100人以下の企業でも、年収が130万円を超えると同様に扶養から外れることになります。
これにより、労働者がこの年収基準を超えないように働く時間を調整するケースが増える可能性があります。

さらに、政府は2023年10月から「年収の壁・支援強化パッケージ」を導入する予定であり、賃上げなどの取り組みを行う企業に対して、助成金を支給する方針です。
この助成金は、従業員1人あたり最大50万円となり、年収106万円または130万円を超えない範囲で働いている労働者を支援する目的で提供されます。

また、連続した2年間の年収130万円超過に関する扶養の認定基準も見直され、一時的な収入増加を理由に扶養内の維持が可能とする制度が検討されています。
これにより、企業や労働者が柔軟に働きやすい環境を構築するための支援が行われる見込みです。

これらの変更は、税制と社会保険制度の公平性を保ちつつ、労働市場のニーズに合わせた柔軟な対応を目指す政策の一環として注目されています。

社会保険の扶養とは

社会保険の扶養とは、被保険者が家族や親族を経済的に支えるための仕組みです。
具体的には、健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険の5つの社会保険に加入している被保険者が、その家族や親族を自身の保険の範囲内に含めることができる制度です。

被扶養者とは、この制度を利用している家族や親族のことを指します。
具体的には、被保険者(社会保険に加入している人)とその配偶者、子供、両親、祖父母、兄弟姉妹などが該当します。
これにより、被保険者の収入によってこれらの家族や親族の社会保険の恩恵を受けられます。

社会保険の扶養条件には、以下の2つの主な条件があります。

1: 被扶養者の範囲内であること

被保険者の配偶者や子供、両親などが、法律で定められた範囲内に含まれている必要があります。
この範囲は、基本的には被保険者とその配偶者、第3親等までの親族を対象とします。

2: 扶養にできる家族の収入を超えていないこと

被扶養者が、年間の収入が一定の基準以下であることが求められます。
一般的には、年間収入が130万円未満であることが条件ですが、60歳以上の高齢者や障がい者については、180万円未満まで収入が認められています。

扶養条件を満たすことで、被扶養者は自身で社会保険に加入せずとも、被保険者と同等の健康保険や厚生年金などの保険の利益を受けられます。
これにより、家庭全体の経済的な負担を軽減し、生活の安定を図れます。

2024年10月からは、社会保険の加入要件が一部変更され、従業員数が51人以上の企業や週労働時間が20時間以上の従業員に対しても適用が拡大される予定です。
この改正により、より多くの労働者が社会保険の恩恵を受けられることが期待されています。

以上のように、社会保険の扶養は、家族や親族の経済的な支援を法的に定めた制度であり、社会全体の福祉向上に寄与する重要な役割を果たしています。

社会保険の扶養に入る場合のメリットとデメリット

社会保険の扶養に入る場合のメリットとデメリットについて詳しく説明します。

メリット

・年金や健康保険料の支払負担がなくなる
扶養に入ることで、自身で社会保険料を支払う義務がなくなります 。
これにより、給与から引かれる社会保険料がないため、手取り収入が増える利点があります。

・収入の手取り額が増える
社会保険料がかからないことで、月々の給与から引かれる負担が減少し、実際に手元に残る収入が増えます。
特に、家計の負担を軽減したい場合には大きなメリットです。

・被保険者が配偶者控除を適用できる
扶養者がいる場合、被保険者は配偶者控除や配偶者特別控除の対象になることがあります。
これにより、所得税の税負担が軽減される可能性があります。

デメリット

・将来の年金受給額が減る
扶養に入った場合、自身の年金受給額が厚生年金に加入している人よりも少なくなる可能性があります。
これは、扶養者が国民年金のみを受け取れるためです。

・扶養条件を満たせるよう収入の調整が必要
扶養に入るためには、一定の収入条件を満たす必要があります。
年間収入が一定額以下でなければならないため、収入の管理や調整が必要となる場合があります。

・社会保障の範囲が限られる
扶養者は国民年金のみを受け取ることができ、厚生年金など他の社会保険の恩恵は受けられません。そのため、将来的に社会保障の範囲や支援が制限される可能性があります。

社会保険の扶養に入ることのメリットとデメリットを考慮すると、収入の増加や税負担の軽減といった経済的な利点と、将来の年金受給額の減少や条件の管理が求められるというリスクが存在します。
個々の家庭の状況や経済的なニーズに応じて、適切な選択をすることが重要です。

扶養や社会保険に関する今後の動き

社会保険の扶養やその他の関連動向は、企業経営にとって今後ますます重要な課題となっています。
特に、2024年10月からの社会保険の加入要件の変更は、労働者の扶養状況や労働条件に大きな影響を与える可能性があります。
こうした変更には、企業が準備を進めておくことが重要です。

まず、社会保険の加入要件が拡大することで、企業は従業員の扶養状況を再評価し、適切な対応を検討する必要があります。
特に、パートタイムやアルバイト従業員に対する社会保険の適用が広がることで、労働者の経済的負担や雇用条件の変化について、事前に的確に説明し、対応することが求められます。

また、企業が配偶者手当や家族手当などの福利厚生を見直す際には、政府が提供するフローチャートやガイドラインを参考にすることが推奨されます。
これにより、手当の支給条件や社会保険の適用基準について、労働者との間で透明性と信頼関係を確保できます。

さらに、企業は中長期的な視点で戦略を策定する必要があります。
例えば、労働者の働き方の多様化に応じた柔軟な雇用制度の導入や、社会保険の加入拡大に伴う財務計画の見直し、労働者との定期的な対話を通じた課題の共有が重要です。
これにより、労働者のニーズに応じた働き方の提供や、社会保障制度の安定的な運営が実現されます。

今後の扶養や社会保険に関する動きは、企業の経営戦略や労働環境の安定性に直結する重要なテーマです。
事前の情報収集と計画的な対応が、円滑な移行と労働者の満足度向上につながることを忘れないようにしましょう。

社会保険の扶養に入るために必要な手続き

社会保険の扶養に入るためには、特定の手続きと書類の提出が必要です。
まず、被扶養者(異動)届を所轄の年金事務所または事務センターに提出する必要があります。
この届は、窓口持参、郵送、電子申請、またはCDやDVDなどの電子媒体を通じて提出することができます。

被扶養者の続柄を確認するための戸籍抄本、戸籍謄本、または住民票の写し(マイナンバーが記載されていないもの)が必要です。
さらに、被保険者と被扶養者のマイナンバーが届出書に記載されている場合、それらを提出する必要はありません。
収入を確認するための書類には、雇用保険受給資格証、離職票、直近の確定申告書のコピー、または課税証明書などが含まれます。

手続きの詳細については、提出期限や書類のフォーマットに関する年金事務所や事務センターの指示に従う必要があります。
これにより、スムーズな扶養申請を行い、労働者と企業が社会保険制度を適切に活用できるよう支援されます。

まとめ

社会保険の扶養制度や年収の壁は、社会保障制度の公平性や財政のバランスを考慮した上で設けられています。
これらの制度がもたらす影響を理解し、個々の家計計画や将来のための収入管理について慎重に考えることが重要です。
将来にわたる社会保障の安定と、個人や家族の経済的な安全性を保つために、適切な情報と計画が不可欠です。

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