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企業型確定拠出年金はいつまで積み立てを行うのか?

2024.08.21 社労士コラム

企業型確定拠出年金(企業型DC)は、企業が掛金を積み立て、従業員がその掛金を運用して老後の資産を形成するための制度です。
近年、少子高齢化に伴う年金制度の見直しが進む中、企業型DCは従業員の老後資金を支える重要な役割を果たしています。
本記事では、企業型確定拠出年金の基本的な仕組みや加入条件、積み立て期間について解説し、選択制企業型確定拠出年金を導入した際の税金や労働保険料の変化についても詳しく見ていきます。

企業型確定拠出年金とは

企業型確定拠出年金(企業型DC)は、企業が従業員のために掛金を拠出し、従業員が自ら年金資産の運用を行う制度です。
この制度では、運用成績に応じて将来受け取る退職金や年金の額が変わります。
制度の概要と加入方法、掛金について以下でご紹介します。

1. 制度の概要

企業型DCは、企業が毎月従業員の年金口座に掛金を積み立てる形で運営されます。
従業員は、積み立てられた掛金を基に金融商品を選択し、資産を運用します。
運用成績によって、退職後に受け取る額が変動するため、運用の成果は従業員の老後資金に大きな影響を与えます。

2. 加入方法

企業型DCには、従業員が自動的に加入する場合と、加入を選択できる場合(選択型企業DC)があります。選択型では、従業員が企業型DCに加入するかどうかを選ぶことができます。

3. 掛金と運用

掛金は企業が負担し、従業員の役職や勤続年数などによって決まるのが一般的です。企業年金が他にある場合は月額2万7500円、ない場合は月額5万5000円が上限となります。従業員は、この掛金を基に自ら資産運用を行い、60歳以降に積み立てた年金資産を退職金や年金として受け取ります。ただし、原則として60歳まで引き出すことはできません。

4. マッチング拠出

企業の掛金に加えて、従業員自身も掛金を上乗せできる「マッチング拠出」という制度もあります。これにより、さらに多くの資産を積み立てることができます。

5. 税制優遇措置

企業型DCには、以下の3つの税制優遇措置があります。

・掛金の全額が所得控除の対象となる。
・運用益が非課税となる。
・受け取る際に退職所得控除または公的年金等控除が適用される。

6. 自己責任と運用手腕

企業型DCの重要なポイントは、「掛金は企業が負担してくれるが、運用の結果は従業員の自己責任である」ということです。運用成績によって将来受け取れる退職金や年金の額が変動するため、従業員の運用手腕が老後の資金に大きく影響します。

企業型DCは、従業員にとって老後資金を効率的に増やす機会を提供する一方で、運用のリスクと責任も伴う制度です。従業員は、積極的に資産運用の知識を身につけ、自分の老後資金を効果的に管理することが求められます。

企業型確定拠出年金の加入条件

企業型確定拠出年金(企業型DC)の加入条件は、以下のように定められています。

1. 基本条件

企業型DCの基本的な加入条件は、60歳未満の厚生年金被保険者であることです。
これは、正社員に限らず、契約社員やパートタイマーなども対象となります。

2. 選択制確定拠出年金

選択制確定拠出年金を導入している場合は、加入を希望する従業員が対象となります。
この場合、従業員は企業型DCに加入するかどうかを選択できます。

3. 非正規従業員の扱い

契約社員やパートタイマーなどの非正規従業員も、原則として60歳未満の厚生年金被保険者であれば加入対象者となります。
ただし、労働条件が正規従業員と著しく異なる場合は、企業の就業規則で適用除外を定めることができます。
この場合、その非正規従業員は企業型DCの加入対象外となることがあります。

4. 公平性の確保

企業は、契約社員やパートタイマーに対して不当な扱いをしないようにする必要があります。
つまり、非正規従業員も、基本条件を満たしていれば企業型DCに加入できるようにすることが求められます。

企業型DCは、従業員の老後資金を効率的に積み立てるための制度です。
加入条件を理解し、適用範囲を正しく設定することが、従業員にとって公平で透明性のある年金制度の運用に繋がります。

企業型確定拠出年金はいつまで積み立てを行うのか

企業型確定拠出年金(企業型DC)は、従業員が60歳までの間、企業が掛金を積み立て、従業員がその掛金を運用して老後の資産を形成するための制度です。
法改正により、同一の会社において60歳以前から継続して雇用されている従業員については、定年年齢を65歳まで引き上げることが可能になりました。
これにより、従業員は定年後再雇用制度などを利用して、65歳まで掛金の積み立てを続けることができます。
ただし、資格喪失年齢を引き上げた場合でも、在職中に受給を開始することはできません。

掛金の積み立ては原則として休止することはできませんが、育児・介護休業などで休職する場合には、規約に基づいて掛金の積み立てを一時停止することが認められています。
これは従業員が家庭の事情により一時的に職場を離れる場合でも、制度の柔軟性を保ちつつ資産形成を続けられるようにするための措置です。

さらに、今後の法改正や制度の見直しによって、加入要件がさらに緩和され、70歳までの加入対象とする可能性も検討されています。
これは、従業員が長期間にわたって資産を積み立てることができるようにするための措置であり、従業員のライフプランに応じた柔軟な退職資金の形成を可能にします。
特に、厚生年金に70歳まで加入できるようになると、60歳以降に転職した場合でも企業型確定 拠出年金を引き続き利用できるようになります。

従業員が退職した場合には、企業型確定拠出年金のポータビリティ(持ち運び制度)が適用され、積み立てた資産を個人型確定拠出年金(iDeCo)などに移管することが可能です。
この制度により、従業員は退職後も積み立てた資産を維持し、資産形成を中断することなく続けることができます。

例えば、自営業者になったり専業主婦となった場合でも、iDeCoへ移管して個人で積み立てを続けることができます。
また、企業型確定拠出年金制度のある会社に転職した場合には、引き続き企業型確定拠出年金に加入することができ、制度のない会社に転職した場合でも、iDeCoに移管して資産運用を継続することができます。

退職後にポータビリティの手続きを行わないと、積み立て資産が国民年金基金連合会に自動移換され、掛金の積み立てや運用ができなくなります。
手数料が引かれ、通算加入期間も算入されないため、従業員に対してこの手続きの重要性をしっかりと説明することが重要です。

企業型確定拠出年金は、長期的な視点で従業員の老後資金をサポートする制度であり、企業と従業員の双方にとって有益な制度です。
法改正や制度の見直しによってさらに利便性が向上することが期待されており、今後もますます重要な役割を果たしていくでしょう。

選択制企業型確定拠出年金を導入後の変化

選択制企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入することで、労働保険料や税金に対する変化が生じます。
これにより、企業と従業員の双方にさまざまなメリットが期待できます。

1. 労働保険料の変化

労働保険料は、雇用保険料と労災保険料から構成されており、その額は月々の給与額に応じて決定されます。
企業型確定拠出年金の掛金を拠出することにより、従業員の給与がその分減少します。
そのため、掛金を拠出した月から労働保険料の対象外となります。
実際に対象外となった労働保険料の納付は、翌年の年度更新時期である6〜7月に行われます。

この仕組みにより、企業は労働保険料の負担を軽減できます。
具体的には、毎月の給与総額が減少するため、全体として支払うべき労働保険料も減少します。
これにより、企業の経費削減につながり、財務的な余裕を生むことができます。

2. 所得税と住民税の変化

企業型確定拠出年金の掛金は、従業員の給与とは別に扱われます。
そのため、掛金を拠出した月から所得税の控除効果が現れます。
これは、掛金が給与として課税対象外となるため、従業員の課税所得が減少し、結果として所得税が軽減されるためです。

控除額はその年の所得税申告で適用されるため、年末調整や確定申告時に反映されます。
これにより、従業員は年末調整の際に所得税の負担が軽減されることを実感できます。

一方、住民税については前年の所得を基に算定されます。
そのため、掛金を拠出した月から次の年の6月以降に住民税の減税効果が現れます。

これは、住民税の改定時期が年度末であるためです。
住民税の算定方法は、前年の所得に基づいているため、掛金を拠出した翌年にその減税効果が反映されることになります。
これにより、従業員は翌年の住民税の負担が軽減されることを実感できます。

選択制企業型確定拠出年金の導入により、従業員は税金負担の軽減を期待することができます。
企業も労働保険料の削減が見込めるため、制度導入のメリットを効果的に活用することができます。
この制度は、従業員の将来の資産形成を支援すると同時に、企業のコスト削減にも寄与します。

企業は従業員の福利厚生を充実させることができ、従業員は税制上の優遇措置を享受することができるため、両者にとってWin-Winの関係を築くことが可能です。

ただし、税制の改正や法令の適用については注意が必要です。
企業は制度導入に際して、従業員への説明を十分に行い、適切な手続きを踏むことが重要です。
また、税制の変更や新しい法令に対応するために、常に最新の情報を把握し、適切な対応を行うことが求められます。

これにより、労働者と企業の両方にとってプラスの影響をもたらす制度として、選択制企業型確定拠出年金を最大限に活用することができます。

選択制企業型確定拠出年金の導入は、企業にとっても従業員にとっても多くのメリットをもたらします。
従業員の税金負担を軽減し、企業の経費削減に寄与するこの制度を効果的に活用することで、より良い労働環境を実現し、従業員の満足度と企業の競争力を向上させることができるでしょう。

まとめ

企業型確定拠出年金は、従業員が自らの将来のために資産を積み立て、運用することで老後の経済的な安心を得るための制度です。
法改正や企業の再雇用制度により、積み立て期間が延長されることで、より柔軟で持続可能な資産形成が可能となります。

また、選択制企業型確定拠出年金を導入することで、税金や労働保険料の負担軽減も期待でき、従業員と企業の双方にとってメリットがあります。
企業型確定拠出年金の導入や運用にあたっては、適切な情報提供とサポートが重要であり、従業員が安心して利用できる環境を整えることが求められます。
本記事を参考に、選択制企業型確定拠出年金を導入することを検討してみては以下がでしょうか。

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